民族訪ねて三千里 ~第53回チベット族(蔵族)

人、自然の神々が宿る 猿と魔女の子どもたち

チベット族はその多数がチベット仏教を信仰し、チベット自治区を中心に、四川省、雲南省、青海省北部などに分布する。
同じチベット族でも言語が異なり、自治区内の言語を「衛蔵」、四川省、雲南省は「安多」、青海省北部のものは「康方」と、それぞれの呼び名が付く。
彼らの生計は農耕と牧畜によるところが大きい。
青稞(ハダカムギ)で作った料理「ツァンパ」や、羊の乳で作ったチーズ「奶渣」などを主食とし、食糧、または衣服の材料にする作物や家畜を自らの手で育てる、自給自足の民族として知られる。
原始時代から祖先の生存が確認されており、実に4000年以上の歴史を持つチベット民族。
そんな彼らには、数多くの伝説がある。
次の「神猿と魔女」もその1つだ。

1. 女性は絹で仕上げた上着を身に纏い、寒い季節はその上にヤクの毛で作ったチョッキ「プル」を羽織る
2. 寺院にて、「マニ車」を回す。1度回すと、経典を1通り読んだことになる
3. 青蔵高原の中心をなすチベット高原は、海抜4000m以上の高地にある

「大昔、観音菩薩の弟子であった神猿は、チベット高原で修行をしていた時、1人の魔女に出会った。
魔女が自分と結婚しないと世に必ず不幸をもたらす、と脅したため、神猿は仕方なく結婚することに。
しばらくして、子どもたちが生まれたが、食べ物も衣服もないという悲惨な生活を送っていた。
そんな猿の子どもたちを憐れみ、観音菩薩は彼らに6種の穀物(ソバ、米、大麦、小麦、ケシ、ゴマ、豆)を与え、農作物の栽培を教えた。
やがて猿たちは進化し、尻尾が消え、言葉を話すようになった。
そして、徐々に人間の形を成し、チベット族の祖先になった」
毎年年末になると、彼らの多くが「五体投地」をしながら、この地を訪れる。
晴れ渡る空に高く聳える昆崙山脈、果てしなく広がる青蔵高原。
この荘厳且つ神々しい大自然に身を置き、心を鎮めたい。

 

~北京ジャピオン2012年12月10日号

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