民族訪ねて三千里 ~第55回マオナン族(毛南族)

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勤勉さが生んだ文化
菖蒲の鳥が幸を運ぶ

広西チワン族自治区北西部の山間部に暮らすマオナン族。
非常に勤勉で手先の器用な民族として知られ、〝土能生黄金(土は金を生み出す)〟という言葉を胸に、農耕と牧畜に日々勤しむ。
今では米やサツマイモのほか、「マオナン菜牛」という牛肉が特産だ。
農耕を生業とする民族だけに、彼らの風習も農業に関わるものが多い。
代表的な行事が、毎年元宵節に行われる「放鳥飛」。
菖蒲の葉で鳥の形をした包みを作り、もち米や小豆を詰めて蒸した後、屋内の台所に吊るすというものだ。
新年の幸福、家内安全を祈願するこの習俗には、古くから伝わる伝説がある。

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1. 女性は「花竹帽」と呼ばれる竹で編んだ編笠を被る。農作業に適したズボン姿が特徴的 
2. 面を被って踊る「木面舞」。歌、演奏、踊りで、人間の喜怒哀楽を表現 
3. 重要な祭事の1つ「分龍節」では、マオナン菜牛を神に捧げる

「かつて、マオナン族の村に1人の法師とその娘がいた。
娘は菖蒲の葉で鳥を作ることに長けており、周りから〝小鳥娘〟と呼ばれた。
ある日、娘は若い男と恋に落ち、新年に結婚することに。
法師は男を試すため、全ての水田に稲の種を撒くよう男に命じたが、男はうっかり稲とアワの種を取り違えてしまった。
法師に、誤って撒いた種を全て回収するよう命じられた男が困り果てている様子を見た娘は、菖蒲の葉で作った全ての鳥に息を吹きかけ、男にこれらを野に放つよう言った。
男が言う通りにすると、鳥は男の手から羽ばたいて飛び出し、種を拾い集めて戻ってきた。
法師は種が回収されたことを喜び、娘との結婚を認めた」
それ以来、村の全ての家庭が鳥を作り始め、鳥が新たな幸福をもたらすとして、元宵節に「放鳥飛」を行うことが風習となった。
この地を訪れ、空気が澄んだ高い山々と、その斜面に広がる棚田を眺めながら、幸福の鳥を探してみたい。

 

~北京ジャピオン2012年12月24日号

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