民族訪ねて三千里 ~第52回ジーヌオ族(基諾族)

太陽を信じる子どもたち 山に鳴り響く奇跡の太鼓

ジーヌオ族は、多数がシーサンパンナの基諾(ジーヌオ)山の麓に居住する。
焼き畑農業によるトウモロコシやイネのほか、バナナやパパイヤなど、亜熱帯果実の栽培も盛んだ。
「基諾(ジーヌオ)」とは、彼らの言葉で「おじの後に続く」という意味で、ジーヌオ族が実の父より、母方の兄弟を尊重する母系社会であることに由来。
古来、太陽を信仰する民族として知られるジーヌオ族の衣装には、太陽を模った刺繍が施されている。
その太陽が象徴的に崇められるのが、毎年旧暦12月に行われる「打鉄節」。
1年の五穀豊穣を祈るこの祭りでは、「太陽鼓」と呼ばれる太鼓の演奏が披露される。
この太鼓は胴に17本の棒が装着され、中心となる丸い枠の周りに、紅炎を彷彿とさせる棒が囲み、正に太陽のイメージ。

1. 長さ約60cmのとんがり帽が特徴。青の生地に「太陽花(エロディウム)」の刺繍が施された胸当てと、襟無しの上着を纏う 
2. 太陽鼓。除夕(大晦日)に打ち、除夜の太鼓として、新年の幸福を祈る 
3. 基諾山はプーアル茶の6大産地の1つとして知られる

楽器としてだけでなく、太陽を表す祭器としても扱われる「太陽鼓」には、次の伝説が残されている。
「かつて、世界が大洪水に襲われ、絶滅の危機に瀕した時、ある女神が大きな太鼓を作り、その中に1組の男女を乗り込ませた。
川に放たれた太鼓は、流れに乗ってジーヌオ山に漂着。
2人は太鼓から出ると、この地で共に農耕に励み、結婚して子どもを育てた。
その子どもが子孫を残し、人口が増え、やがてジーヌオ族と名乗るようになった。
それ以来、太鼓は、滅亡から救った神聖な物として、信仰されるようになった」
このほか、毎年の新米、新作の収穫を祝う「新米節」など、ジーヌオ族の代表的な祭りでは、必ず「太陽鼓」が登場する。
この地に足を踏み入れ、心にまで響いてきそうな太鼓の鼓動を深く感じてみたい。

 

~北京ジャピオン2012年12月3日号

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