民族訪ねて三千里 ~第40回バオアン族(保安族)

他民族の文化との融合
悪魔を倒した刀
バオアン族は、その大半が甘粛省臨夏回族自治州積石山バオアン族トンシャン族サラール族自治県に暮らしている。
元代(1271~1368年)は青海省で生活し、清代(1644~1912年)に同地に移住してきた、イスラム教派のモンゴル族が彼らのルーツだと言われている。
文化は、農業や手工業、イスラム教の信仰など、付近で生活するトンシャン族や回族の文化の影響を受けた。
その中の手工業で、最も盛んなのは「保安腰刀」と呼ばれるナイフの生産。
外見が美しく、鋭利で耐久性に優れていると言われ、バオアン族の収入はこのナイフによるところが大きい。
調理用や装飾用など、用途も様々で、種類も20以上あるとされる保安腰刀だが、これにまつわる言い伝えがある。

1. 同族自治県の元気な子どもたち。最近はイスラム教の風習でベールをかぶる
2 伝統工芸品の「保安腰刀」。1本作るのに40以上の工程がある 
3. 中国の至る所で見かける「蘭州拉麺」は、こちらが本場。もちろん豚肉は使わない

 

「その昔、バオアン族が平穏に暮らしていた頃、突然悪魔が現れた。
女性たちを次々に襲う悪魔にバオアン族の人々は怯えていた。
そんな中、哈木克という血気盛んな刀鍛冶が、悪魔に立ち向かった。
哈木克は刀で悪魔を刺したが、悪魔はびくともしなかった。
哈木克が悩んでいると、翌日夢で1人の老人に会った。
老人は哈木克に〝波日季〟という木を探し、その木の葉の形を模した刀を作ればよい、と告げた。
次の日、老人の言うとおりに〝波日季〟の木の葉の形に刀を作り、再度悪魔に立ち向かうと、
悪魔はその刀を見ただけで、首と身体が離れて、哈木克の足元に倒れたという」
これが保安腰刀の原形と言われ、今日まで伝わっている。
この保安腰刀を手に取れば、光り輝く刃に、悪魔を倒したバオアン族の英雄、
哈木克の姿が浮かび上がってくる。

 

~北京ジャピオン2012年8月13日号

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