破天荒な妻を支える夫
知られざる妻の過去
張青は、孟州(現河南省焦作市孟州市)で料理屋を営む。
かつて、寺で野菜畑の番人をしていたことから、
「菜園子(さいえんし)」と呼ばれたが、
些細な事で住職を殺し、強盗に身を落とす。
そしてある日、張青は獲物にある老人を選ぶ。
しかしこの老人が思いのほか腕が立ち、
張青の方が打ち負かされてしまった。
ところが老人は張青を気に入り、娘婿にと迎え入れる。
その娘こそ、恐怖の人肉マントウで知られる、
孫二娘(そんじじょう)であった。
そんなある日、張青が街から戻ると、
孫二娘が武松に殺されそうになっていた。
彼女は、相手が武松と知らず、
手に掛けようとして返り討ちに遭ったのだ。
張青は何とか武松の怒りを鎮めようと、必死に謝罪する。
彼は、見境なく人を殺す孫二娘に手を焼きつつも、
母を賊徒に殺され、賊徒への報復の機を窺って暮らす
彼女を愛していたのだった。
またその後、役人に追われて村に逃げ込んだ武松を助けたことで、
武松の兄貴分である魯智深から、入山を勧められる。
賊徒はなかなか現れないし、このまま店をやっていても仕方がないと、
張青は孫二娘を説得して入山。
その後、任されたのは山塞の料理店経営で、
2人は諜報機関でもあるこの店を営む傍ら、
夫婦で戦に出て、手柄を立てる。
物語では孫二娘の活躍が多かったが、
その陰で、常に嫁を支える夫の姿があった。
張青が最後に倒れた安徽省黄山市徽州(きしゅう)。
かつては、文化都市として賑わいを見せ、
京劇のもとになった「徽劇」が有名だ。
この地を訪れ、徽劇で鮮やかに描かれる
『水滸伝』を楽しみたいものだ。
~北京ジャピオン2013年8月12日号