今も生きる古代文字
雪の神が守る奇跡の民族
雲南省西北部の玉龍雪山麓に暮らすナシ族。
緑豊かな金沙江流域で、ジャガイモや蕎麦などを栽培して生活する。
ナシ族と言えば、〝生きた象形文字〟と呼ばれるトンパ文字を使用することで有名。
代々「トンパ」と呼ばれる司祭のみが使い、文字通り物の形を模ったこの文字は、古くから伝わる「トンパ教」と関係が深い。
毎年旧暦2月8日に催される祭り「三朶節」。
この日は、トンパ教の中で守護神とされる「三朶」の誕生日として、男子は馬術を競い、女子は舞踊を披露するなど、盛大に祭事を行う。
1. ナシ族の女性は外出する時、羊の皮の肩掛けを羽織る。背中の7つの円は北斗七星を表す
2. トンパ文字。文字の色にも意味があるという
3. 燻銀色の瓦や煉瓦が特徴的な麗江市の家並み。街の中には水路が縦横に走る
この「三朶」は、ナシ族の間に伝わる次の伝説に由来する。
「ある年の旧暦2月8日、1人のナシ族の女狩人が麗江の玉龍雪山に猟に出た。
そして彼女は、雪のように白い岩を見つける。
武将のような姿形をした奇異な岩で、片手で持ち上げられる程軽かった。
不思議に思った彼女は、岩を背負って持ち帰ることに。
ところが、山麓で岩を下ろした時のこと。
再び背負おうとすると、岩はまるで地面に根を張ったかのように、ずっしりと動かなくなった。
彼女はそんな岩を神の化身として、祠に奉ることにした。
以降、山麓では白の甲冑を纏い、白の矛を持ち、白馬に跨った武将の姿が目撃され、村で戦が起これば、武将が多くの兵士を連れて応援し、火事には雪を降らせて鎮火した。
民はそんな将軍を、守護神〝三朶〟として崇めるようになった」
岩が発見されたのが未(ひつじ)の日だったこともあり、祭りには羊肉が奉げられる。
美しい麗江と広大な玉龍雪山を背景に行われる「三朶節」。
この伝統の祭りの中に身を置き、神秘の力を感じてみたい。
~北京ジャピオン2012年11月26日号