確かな眼識をもつ馬泥棒
晁蓋の死を招いた名馬
段景住は河北省保定市涿州市出身の馬泥棒。
武術の心得はなかったが、長い間、
馬を盗んでは売って生活しており、
良馬を選別する能力に長けた。
見かけは大柄で、赤い髪に黄色い髭を
たくわえていたため、「金毛犬」と呼ばれる。
段景住が金国(現中国東北部)で暮らしていたある日、
梁山泊の噂を耳にする。
宋江の存在を知り、このまま泥棒をしていても仕方ない、
と入山を決意。
そして、「照夜玉獅子」と呼ばれる金国王子の愛馬を、
宋江への手土産にしようと盗んだ。
白毛の美しい馬で、1日に千里走ると言われた。
彼は馬を連れて梁山泊に向かったが、
途中、山東省の曾頭市なる地で、
山賊に馬を奪われてしまう。
曾頭市を取り仕切る山賊に太刀打ちできず、
馬を諦め、そのまま梁山泊に向かう道中、
宋江らに遭遇。
段景住は事情を宋江に話し、
義侠心に篤い宋江の計らいで、
馬奪還のため、山賊と対戦する。
しかし、この戦いで梁山泊頭領・晁蓋(ちょうがい)が、
敵の矢に当たり戦死してしまう。
かえって梁山泊に大きな損失を与えてしまったが、
段景住は馬の識別眼が評価され、
宋江に重用される。
彼はその後、軍馬調達や機密伝令の任に当たるなど、
戦の裏側で梁山泊を支えた。
段景住が生まれた保定市涿州市。
『三国志演義』の劉備、関羽、張飛が
義兄弟の契りを交わした場所として知られる。
二千年以上の歴史をもち、
唐の詩人、賈島(かとう)や
宋の初代皇帝・趙匡胤(ちょうきょういん)など、
歴代の英傑を多数輩出した。
彼らとともに、この地を駆けた駿馬を見て、
段景住の眼力は養われたのだろうか。
~北京ジャピオン2013年5月27日号