民族訪ねて三千里 ~第44回ヌー族(怒族)

古代より勤勉な山の民
悲劇のヒロインに捧ぐ歌

ヌー族は怒江リス族自治州の貢山県、福貢県などに分布して生活している。
言語はヌー語を使用するが、集落によって多少異なるという。
貢山に住むヌー族は自らを「阿怒(アーヌー)」と呼び、福貢県では「誓阿怒(シーアーヌー)」と呼ぶなど呼称にも差があるようだ。
古代より、〝怒人居山巓(ヌー族は山の峰に住む)〟と言われ、今も高い山岳地帯に居住する。
トウモロコシやムギなど畑作を生業とし、自然の精霊を崇拝する勤勉な民族としても有名だ。

1. ヌー族の女性。麻布を編むことに優れ、既婚の女性はスカートの縁にレースを加える
2. 怒江。彼らの名称は怒江の両岸で暮らしていたことに由来する
3. 女性は、子どもの時から麻布織りの技術を学ぶ

そんな彼らの最も重要な行事は毎年旧暦3月15日に行われる「鮮花節」。
「仙女節」とも呼ばれるこの祭りには、次のような言い伝えがある。
「その昔、ヌー族の住む山村に、阿茸と言う聡明で美しい女性がいた。
勤勉で苦労を惜しまない彼女は、以前から干ばつで農作物が育たない村の現状をどうにかしようと、山を切り開き、泉から水を引き出した。
おかげで村には水が行き渡り、作物が育つ豊かな緑野になった。
こうして阿茸は人々から仙女と呼ばれ、崇拝されていたが、阿茸はある日、村の男に強引に言い寄られた。
彼女が拒否すると、男は無残にも彼女を洞窟で殺害してしまった。
その日こそが、旧暦の3月15日だった」
それからというもの、ヌー族の民たちは命日になると、山の洞窟に花を捧げ、ご馳走を準備し、歌と踊りで、仙女・阿茸の魂を鎮める。
また、トウモロコシとソバを原料とした「咕嘟飯」を使った「咕嘟酒」が振舞われ、盛大に祭りを執り行う。
山嶺にまで響き渡る、悲劇のヒロインに捧げる歌に、しっかりと耳を傾けたい。

 

~北京ジャピオン2012年9月10日号

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