水の中では常に敵なし
神にもなった水軍の要
張順は、江西省九江市出身の魚問屋。
もとは長江で兄の
張横(ちょうおう)と、
闇の渡し船をし、
旅人の金銭を巻き上げていたが、
足を洗って魚屋となった。
肌が透き通るように白く、
約20㌔を難なく泳ぎ、
7日間の潜水も軽くやってのけることから、
波をくぐる白い
「鯈(ハヤ)、(コイ科の淡水魚)」
に例えて、
「浪裏白条(鯈)」と呼ばれた。
ある日、張順が漁場の生簀に向かうと、
乱暴者で有名な李逵(りき)という男が、
漁師を殴って暴れていた。
張順はこれを止めようとして、
李逵に挑むが、
地元で「鉄牛」と呼ばれ恐れられる
彼の前に、手も足も出なかった。
そこで、張順は李逵を水中に
引きずり込み、散々懲らしめた。
すると李逵は降参し、
九江を訪れている宋江を
もてなすために、
いい魚を出してもらおうとして暴れた、
と話した。
張順は、かの有名な
宋江の名を聞いて、彼と和解。
そして、この時宋江とも縁ができて、
李逵と一緒に入山するのだった。
その後は、水軍頭領として活躍。
梁山泊の宿敵、高俅(こうきゅう)
が攻めてきた時には、
主力水軍を指揮し、
高を生け捕りにするなど、
水戦では圧倒的な存在感を見せる。
死後は、水軍の守り神、
「水神金華将軍」として祀られた。
張順が生まれ育った江西省九江市。
北に長江を臨み、
南に廬山が聳える。
湖北、安徽、江西の3省が交わり、
交通の要所として、古来、
兵家必争の地であった。
水滸伝には水に関わる豪傑が
多く登場するが、張順もそのひとり。
白いハヤと呼ばれた英傑が泳いだ、
この母なる地、
母なる水辺を訪れてみたい。
~北京ジャピオン2013年4月22日号