独特の風貌を持つ虎
官吏の妻を斬り殺す
燕順は山東省煙台市莱州市に生まれ、
牛や羊を売買する商人だった。
ある時、重税が科されて商売が立ち行かなくなり、
山東省の清風山を拠点とした山賊になった。
赤い髪に黄色い髭を蓄えた特異な容姿、
また、薙刀に似た武器「朴刀(ぼくとう)」の使い手で、
腕前も中々だったことから、「錦毛虎(きんもうこ)」と呼ばれ、
畏怖された。
ある日、燕順の部下が山中である男を捕らえた。
燕順は、男の心臓を抉り出し肝吸いにするつもりでいたが、
その男は天下に名高い、あの宋江だったのだ。
燕順たちはすぐに縄を解き、もてなしていたところに、
女が迷い込んで来た。
女は麓にある村の悪徳官吏の妻だったが、
女好きで有名な部下の王英が、女を妻にしようと捕らえた。
しかし、宋江と燕順は女を放つことにし、
王英も渋々承諾した。
しかしその数日後、下山した宋江が、
この女に山賊の首領として訴えられ、捕縛される。
知らせを聞いた燕順たちは、救出すべく村を襲撃して、宋江を奪還。
王英は好機とばかりに女を捕らえ、再び妻にしようとしたが、
燕順は女を毒婦としてあっさり斬り捨てたのだった。
この手柄が認められて彼らは入山し、
山賊の仲間たちとともに、騎兵軍で活躍を見せてゆく。
燕順が生まれた山東省煙台市莱州市。
山東半島北東部に位置する同市はかつて、
秦の始皇帝や漢代の武将・韓信(かんしん)など、
歴史上の名だたる人物が訪れた場所。
また、大理石の産地としても有名で、
その石を使った彫刻物の製造が盛んである。
この地を訪れ、水滸伝にその名を刻んだ、
この錦毛虎の足跡を追ってみたい。
~北京ジャピオン2013年8月19日号