民族訪ねて三千里~第48回イ族(彝族)

大地に響く闘いの鼓動 松明に懸ける熱き想い
イ族は、主に四川省や雲南省などに分布して暮らす。
四川の涼山や雲南の楚雄など、各地に自治州を持ち、日々農耕と牧畜に従事している。
そんな彼らには、毎年旧暦6月に行われる「火把節(松明祭り)」という祭りがある。
丘の上にたくさんの松明を上げ、1年の収穫を祈るこの祭事は、「彝族摔跤」なる格闘技が披露されることで有名。
同競技は彼らの言葉では「杏格」と呼ばれ、2人が陣の中で、互いにベルトを掴み、足をすくったり、投げたりして相手を倒せば勝ち。
日本の相撲に似ているが、古くから言い伝えられている彼らの伝説にも記されている。

1. 四川や雲南のイ族は、男女共に黒を基調とした衣装を身につける 
2. 「彝族摔跤」は1試合3回勝負で、先に2勝した方が勝者に 
3. 涼山の火把節。無病息災や収穫を願うと同時に、年長者や親族を敬う祭りでもある

「その昔、イ族の住む地上に阿体拉巴、天界に斯惹阿比という2人の男がいた。
天地の両者がある日、『摔跤』で対決することになったが、阿体拉巴は急用で出かけることになり、母親に、鉄で作った料理で斯惹阿比をもてなすよう伝えた。
斯惹阿比は出された鉄の料理を見て、こんなに硬い物を食べている阿体拉巴は、さぞ怪力に違いないと恐れて逃走。
戻って来た阿体拉巴は逃げた斯惹阿比を追い、決闘を挑んだ。
斯惹阿比が敗れて死ぬと、天界で頼りにしていた男が死んだことで天の神が怒り、大量のイナゴを野に放った。
イナゴに食い荒された野原を見て、阿体拉巴は大勢の人を連れて松明を焚き、イナゴを追い払った」
こうして、今日も「火把節」では松明が盛大に焚かれ、女性の鮮やかな踊りを背景に「彝族摔跤」が行われる。
水と緑に囲まれた涼山の地を踏めば、熱い闘いで鳴り響く大地の鼓動が胸にまで響いてきそうだ。

 

~北京ジャピオン2012年10月15日号

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