仁徳で人を集めた頭領
水滸伝はここから始まる
宋江は、聡明さと慈悲さを兼ね備えた天魁星の生まれ変わりとされる。
特に武芸に秀でている訳でなく、突出した能力もないが、義に厚く、困った人には手を差し伸べる。
そのため、人々から「及時雨(恵みの雨)」と呼ばれ、人格者の頭領として、豪傑たちに慕われた。
宋江は山東省鄆城県の下級官吏。
ある日、皇帝へ贈る賄賂を強奪して、政府に追われていた晁蓋(ちょうがい)という人物を助ける。
晁蓋はその礼として、手下に手紙と金を届けさせた。
しかし、彼はこの手紙を妾に読まれ、最後には脅迫されてしまう。
彼は実際、金を受け取っていなかったのだが、妾は信じず、「金を払わないなら役所に手紙を持っていく」
と言った。
怒った宋江は彼女を殺してお尋ね者となり、長い逃亡生活が始まる。
追っ手から逃げるため、宋江は各地を転々とするが、どこにも安住の地はない。
居酒屋で痺れ薬を飲まされ人肉マントウにされかけたり、山賊に生き胆を吸い物にされそうになったりと、様々な騒動に巻き込まれる。
しかし、この放浪で多くの仲間を得た宋江は、ついに梁山泊にたどり着く。
そして、この地を舞台に、豪傑たちと共に、打倒宋王朝の物語を繰り広げてゆくのだった。
宋江の故郷、鄆城県は山東省南西部に位置し、「梁山108将、78人が鄆城に」と言われるほど、『水滸伝』と関わりが深い場所。
黄泥崗遺跡や唐塔など、物語に登場する場所の旧跡が点在する。
実在した人物でもある宋江。
梁山泊第1の星が生まれたこの地を訪れ、ここから『水滸伝』の世界を覗いてみよう。
~北京ジャピオン2012年1月7日号