女剣士に一目惚れ
夫婦で戦場を駆け巡る
王英は、清風山なる山塞で暮らす
山賊の一員。
槍の腕は立つが、相当な女好きで知られ、
身長は5尺(約160㌢)にも満たず、
丸い顔に鋭い眼つきという風貌に加え、
ことさら、足が短いことから、
「矮脚虎(わいきゃくこ)」と
呼ばれていた。
ある日、流刑に処された宋江を助け、
仲間とともに梁山泊に加わった王英。
入山後、最初の戦となった、
祝家荘の戦いに参戦したが、
敵軍から、勇猛さと美貌で名を馳せた
女剣士、扈三娘(こさんじょう)が現れると、
相手が女と知った王英は、
我先にと一騎打ちを挑んだ。
しかし、あろうことか、
王英は勝負の最中に欲情してしまい、
槍さばきが乱れ落馬。
彼は捕虜となってしまったが、
後に梁山泊が戦に勝利し、解放された。
そして、扈三娘が投降し、
仲間に加わることに。
宋江は、王英のことを思い、
彼と扈三娘を結ばせた。
その後は、夫婦揃って戦場に立った2人。
王英も彼女一筋で、
かつての女へのだらしなさは
収まったかに思われた。
しかし、田虎(でんこ)の戦いで、
作中屈指の美女とされる将軍、
瓊英(けいえい)と戦い、
以前の悪癖が再燃して敗北。
最後まで、美女を前にすると、
闘志が削がれてしまう王英であった。
王英が育った江蘇省淮安市。
かつては両淮と呼ばれた地域の一部で、
漢代の名軍人、韓信(かんしん)や
『西遊記』の著者とされる、
呉承恩(ごしょうおん)の出身地として名高い。
また、淡水魚料理などに代表される、
淮揚菜の本場としても知られる。
京杭大運河が流れる、
風光明媚な同地に足を踏み入れれば、
梁山泊の義に、女性への情に、
この地を奔走していた
王英の姿が浮かんでくる。
~北京ジャピオン2013年4月1日号