旋風起こる所に鉄牛あり
虎に襲われた母への純心
李逵は殺人鬼の星、天殺星の生まれ変わり。
「板斧(はんぷ)」という2丁の斧を使い、
歯向かって来た者は、女、子どもも容赦なく斬る。
むさくるしい髪に、
血走った目をした色黒の男であることから、
「黒旋風(こくせんぷう)」、
「鉄牛(てつぎゅう)」などと呼ばれた
李逵は故郷で人を殺め、
江州に逃れてから、
牢役人の戴宗(たいそう)のもとで働いていた。
そんなある日、噂に聞いた宋江がやって来た。
李逵は、彼をもてなそうと、
金を手に入れるため賭博場に入ったが、
大負けして暴れ、店を壊してしまった。
しかし、宋江は李逵を慰め、
李逵は宋江の寛大さに感動し、
彼に付き従うことにした。
数カ月後、宋江が宋軍に反逆罪で捕らえられてしまう。
そこで李逵は仲間と救出に向かい、
先頭に立って敵城に入った。
見物人も含め、邪魔者はすべて斬り捨て、
宋江を救出。
無関係な者まで殺したが、
手柄を認められ、入山することに。
その後、李逵は故郷に残してきた母親が
心配になり、連れて帰ることにした。
しかし、母親と梁山泊に向かう道中、
母親が虎に食われてしまう。
李逵は涙を浮かべ、
狂ったように斧を振って虎を殺した。
李逵は山塞でよく騒ぎを起こし、
厄介者扱いされていたが、その実、
幼児がそのまま大きくなったような
純粋な心の持ち主だったのだ。
李逵が生まれ育った山東省臨沂市沂水県。
山河が美しく、春秋戦国時代の兵法書
『孫子』の出土地として知られる。
梁山泊で暮らすため、母を迎えに再び
沂水県を訪れた李逵。
母を背負い、共に暮らす日々を楽しみにしながら、
幼き頃に過ごしたこの地を歩いたことだろう。
~北京ジャピオン2013年6月17日号