水滸巡礼~108の足跡~皇甫端(こうほたん)

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山塞で唯一の獣医師
戦時に不可欠の名伯楽

皇甫端はかつて東昌府(現山東省聊城市)に住む名の知れた獣医であった。馬に関して非常に目が利き、家畜の病気なら薬や鍼で治せないものはないと言われるほど。地元では、目が青く、腹まで届く赤ひげをたくわえ、異国風の容貌だったことから、「紫髯伯(しぜんぱく)」と呼ばれていた。

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そんなある日、東昌府に梁山泊の軍が攻め込んでくる。東昌府の将軍、張清(ちょうせい)は最後まで抗い死闘を繰り広げたが、梁山泊の策略に嵌り降参。しかし宋江は張清を気に入り、入山を勧めた。張清は東昌府の獣医である皇甫端のことを以前から知っており、彼の力がきっと役立つ、と推挙した。宋江の前に連れて来られた皇甫端は、一目見るなり、彼からあふれる侠気に惚れ込み、その場で入山を申し出る。宋江も皇甫端の独特な外見と技術に魅かれ、皇甫端の加入を認めた。

梁山泊入りしてからは、軍馬の管理を担当し、戦で負傷した馬の治療に当たった。これまで軍馬が死んでは、馬の買い付けを担当した段景住(だんけいじゅう)が馬を連れてきていたが、皇甫端の技術で十分に軍馬を確保できた。皇甫端が最前線に立つことはなかったが、段景住や医者の安道全(あんどうぜん)とともに、梁山泊を陰で支えた人物として描かれている。

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皇甫端の故郷、北京市。言わずと知れた中国の首都で、50万年前から人類が生活し、かつては大都、北平と呼ばれ、700年以上も都が置かれた悠久の地だ。世界遺産の故宮博物院を歩けば、宮廷の獣医として仕えた皇甫端の、馬を連れた足音が聞こえてくる。

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~北京ジャピオン2013年11月25日号

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