極悪非道の殺人鬼
李逵の唯一無二の戦友
李忠は、街で棒術の技を披露し、見物人に薬を売って各地を渡り歩いていた。「梨花槍(りかそう)」なる棒を自在に操り、物語に有名な棒術使いとして登場する史進(ししん)も、彼に師事していたというほどの腕前だった。虎殺しを意味する「打虎将(だこしょう)」のあだ名は自分で付けたものとされる。
ある日、鮑旭がいつものように枯樹山界隈を徘徊していると、梁山泊の李逵(りき)と焦挺(しょうてい)に出会った。2人がやって来たのは、凌州(現山東省徳州市)の梁山泊討伐軍である関勝(かんしょう)を攻めるためだという。ならず者同士の3人はすぐに意気投合、李逵は鮑旭を戦いに必要な人材と考え彼を誘うと、元来、暴れることを好む性格の鮑旭は快諾し、一緒に戦うことに。
そこへ、護送車を率いた官軍の兵がやって来る。鮑旭たちは、官軍が攻めてきたものと思い、手勢を率いて迎え撃った。鮑旭が刀、李逵が斧をそれぞれ狂ったように振り回すと、次々と敵の首が戦場を飛び交う。敵兵はほうほうの体で逃げ去り、残された護送車の中には梁山泊の宣賛(せんさん)と郝思文(かくしぶん)の姿があった。2人は凌州攻めで敗れ、捕虜となって護送されていたのだ。鮑旭たちは、報復戦として凌州に攻め入り見事陥落させ、これを機に入山した。
その後も鮑旭は、李逵らとともに鬼気迫る戦いを見せ、多くの敵兵の戦意を喪失させる。林冲(りんちゅう)のような威風堂々とした軍人に匹敵する活躍を見せた。
鮑旭が戦った凌州は、山東省北西部、黄河下流域に位置し、新石器時代の遺跡が多く残る「龍山文化」の地として知られる。喪門神が激しく暴れ回ったこの地に立つと、彼に劣らない激しさを持つ黄河の音が聞こえてくる。
~北京ジャピオン2014年3月31日号