地獄へ誘う裁判官
薬で宋江を殺しかける
李立は、江州(現江蘇省九江市)近くの掲陽嶺という土地で、細々と居酒屋を営んでいた。赤い鬚に血走った丸い目という恐ろしい外見をし、客に痺れ薬を飲ませて金品を奪い、さらには殺して人肉マントウを作る人殺し稼業をしていたことから、冥府の裁判官を意味する「催命判官(さいめいはんがん)」のあだ名で呼ばれていた。
ある時李立の居酒屋に、殺人罪で流罪となった宋江と数人の護送役人がやって来た。李立はそれが誰かを知る由もなく、いつも通り痺れ薬を盛った酒と料理を出した。彼らはすんなりと食事に手を付け、談笑するうちに意識が朦朧とし始め、次々と倒れていった。李立は早速、宋江の身体を料理台に乗せ、解体しようとしたが、手伝いの若い者がいなかったため、彼らの帰りを待つことにした。そこへ漁師の李俊(りしゅん)が、護送されてこの地を通るはずの宋江を探し、店に入って来る。李俊から宋江の外見の特徴を聞かされた李立は、全身が粟立つのを覚えた。料理台に寝かせたその男こそ宋江だったからだ。李立は直ちに、宋江に覚まし薬を飲ませ、何とか事なきを得た。その後、侘びとして無実の罪で処刑されそうになった宋江を助け、これを機に入山。
山塞では情報伝達のために置かれた南山酒店主人を務めた。物語では、同じく人肉マントウを作る孫二娘(そんじじょう)が有名だが、李立もまた残忍な店主として描かれている。
李立が倒れた浙江省杭州市淳安県。省内で最も面積が広い県であるこの地は、1000以上の島が散らばる千島湖が有名だ。湖に囲まれた孤島は、どこか梁山泊を彷彿とさせる。
~北京ジャピオン2014年3月10日号