水滸巡礼~108の足跡~湯隆(とうりゅう)

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梁山泊唯一の武器職人
乱暴者、李逵との腕比べ

湯隆は、陝西省延安府の刀工。
博打に手を出し、全財産をそれにつぎ込んだ結果、
次第に落ちぶれ、その日暮らしをするようになる。
金属を扱う職で、身体じゅうが豹柄のような
あばただらけだったことから、
「金銭豹子」と呼ばれていた。

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湯隆はある日、
街中で棒の先に瓜形の鉄球がついた
「鉄瓜鎚(てっかつい)」なる武器を振り回していた。
重さ約20㌔もあるこの鉄爪鎚で、
路傍の石を打ち砕き、見物人たちを感心させたが、
そこに、梁山泊きっての暴れ者、
李逵(りき)が現れる。
李逵が湯隆の鉄爪鎚を奪い取ろうとしたので、
いきなり手を出すとは何事か、と咎めた。
李逵は、湯隆の腕を大したものではない、
自分が手本を見せてやる、
と鉄爪鎚を取って振り回して見せた。
いくら振り回しても
疲れる素振りを見せない李逵を見て、
湯隆は素直に負けを認めた。
相手が梁山泊の李逵であることを知った湯隆は驚いたが、
李逵もこの時、湯隆が刀匠であることを知る。
武器が足りない梁山泊にとって、
刀鍛冶は不可欠な存在。
李逵はすぐさま湯隆に入山を請うた。
その後、呼延灼の77戦いで、
梁山泊を苦しめた戦法「連環馬」を破る手段として、
湯隆は自作の「鈎鎌鎗(こうれんそう)」の使用を進言し、
勝利に導く。
武器作りのみならず、実戦でも活躍し、
一目置かれる存在となった。

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湯隆が生まれた陝西省延安市。
黄河の上、中流域に広がる高原、
黄土高原の中部に位置し、
壺口瀑布や宝塔山など、多くの観光地を有する。
鉱物資源豊かな場所として知られる
この地に足を踏み入れれば、
湯隆の刀を打つ音が聞こえてきそうだ。

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~北京ジャピオン2013年5月13日号

 

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